分かりやすい演武はいかが?~二人一組でやる「対打」の演武は迫力と連携に瞬きを忘れます
創造と工夫、心に明かりを
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さて、
中国拳法は勿論の事、様々な武術には演武という形式で人前で技を見せる事があるのですが
「分かりやすいのはある?二人一組で殴り合うような、スパーリングみたいなの」
こういう需要もあります。
ありますよ~、武術はそういったことはとても得意なのです。
中国拳法というと「一人で型だけをやっている」というイメージがありますが、こうした二人一組で技を仕掛け合う練習方法もあります。
「対打」または「対練」と言われる練習方法なのですが、これを演武として行うと、とても迫力満点な場面が繰り広げられます。
●型演武~対打、対練~
◆1.どんな技を掛けあうの?
◆2.どんな構成で演武するの?
一人とも違う、集団演武とも違う、たった二人が織り成すギリギリの緊張感が、息をのむアクションシーンにあなたをいざないます。
目次
<<●型演武~対打、対練~>>
◆1.どんな技を掛けあうの?
主に、自分の習っている拳法の基本や応用を組み合わせて、互いに技を掛けます。
例えば私の取り組んでいる「形意拳(けいいけん)」は突き技が主体です。
そのため、相手が打ってくる突きをかわしたり、避けたりしながら相手の腹部や顔面に向かって反撃するというやり方になります。
これが太極拳になりますと、同じ対打でも全く風格が異なってきます。
太極拳は相手の力を利用し相手を制する技に優れています。
そのため相手の攻撃をかわす時は「受け流す」という動作が基本となります。そしてそのまま密着した状態からの反撃が始まります。
ほぼゼロ距離からの体当たりや相手を崩してからの追撃などを見ると、「公園で高齢者がやっているよく分からない踊り」が実はえげつない技の連続である事が分かります。
◆2.どんな構成で演武するの?
対打は互いに向き合った状態から始まり、動きの手順は攻め方や守り方が始めから終わりまで決められています。
この「約束事の攻防」から迫力と連携のとれた美しさが生まれるのですが、全体的な流れと印象は、攻防の手数が多い場合と少ない場合によって変わってきます。
◆a.攻防の手数が多い場合
中国拳法の対打は、主にこの構成になります。
私が取り組んでいる形意拳や先ほど例に挙げた太極拳もこの手法が多いです。
相手が攻めてきたらそれを避けて反撃を行い、相手はその反撃を防いでまたこちらに攻撃をする、この繰り返しです。
時間としては短い物は10秒以内で終わるのですが、それでも五手から十手以上の攻防が行われます。
太極拳の場合は時間にして2~3分動き続けるため、その動きはとても多彩です。
熟練者同士が対打の演武を行うと、まるで舞のようであり感動さえ覚えます。
「太極拳対練」という二人一組で行う演武があるのですが、私の師である馮正宝老師による演武を見て、その動きの優雅さに惚れ込み「自分もこれをやりたい!」と入門してくる人もいる程です。
◆b.攻防の手数が少ない場合
殆どの日本古武術はこの構成が主体となります。
中国拳法でも一部の対打はこの構成になっています。
手数は概ね二~三手で終わり、時間にして僅か数秒で終わります。
まさに一瞬の攻防です。
始めから「攻める側」と「受ける側」が明確に決まっており、殆どの場合は「受ける側」が勝つように構成されています。
この構成の演武を見ると、武術は護身のためにあると強く認識します。
相手が突き出来ても、蹴りを放っても、ナイフで刺してきても
慌てず騒がず、紙一重で避けて身を守り、相手を制していく。
短いながらも濃縮された動きは、演武を見ている人の瞬きさえ止めてしまう迫力があります。
<<人気の理由は「音」にもあり>>
対打の演武は見ていて分かりやすいため人気があります。
その分かりやすさの理由は、見た目の美しさもありますが、実は「音」にもあります。
攻撃を繰り出す時の呼吸音、体がぶつかるときに響く鈍い音。
こうした要因を含めて、目と耳で楽しむことが出来るのが、対打の演武を見る醍醐味なのです。
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<目次>
▼はじめに
●「演武」って何?~そんなあなたへ中年会社員武術家が取り組みと 目的を紹介します
▼演武の種類
●演武って結局何するの?~実際に大会に参加した中年会社員武術家が一人でやる演武の内容を説明します
●集団が魅せる演武の美~規律が生む演武の美しさをたっぷりお聞かせしましょう
●分かりやすい演武はいかが?~二人一組でやる演武は迫力と連携に瞬きを忘れます
▼個人的な経緯
●かつては演武が嫌いだった?~中年会社員武術家が演武に積極的でなかった理由
●それは誰かの笑顔の為に~中年会社員武術家が演武会の参加を続ける理由
▼演武会の楽しみ方
●「見て楽しむ」中国拳法~演武者との一体感を得る3つの取り組み
●演武会に行くのは初めてかい?~では、日本古武道演武大会に行った時の「どよめきと驚き」の話をしよう
●日本古武術の演武が見たい?~私なら日本古武道演武大会を楽しみに待ちます、2月開催ですけど!
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立ち止まっても倒れても、また人は歩き出す 岩見より