中国拳法の槍は全身を鍛えて協調させる良い鍛錬法だとあらためて実感する

槍のイラスト

槍は中国拳法において「武器の王」と言われてまして…なんて言っても誰も食いついてこなくて寂しい岩見です、ごきげんよう。

2018年2月12日は中国拳法の武器のひとつである「槍」の稽古をしていました。

槍の稽古をしていていつも思うのは「全身を鍛えるのに本当に良い鍛錬方法だよな」ということです。

腕力に頼らない「全身を動かしながら協調させる」、「意識と動きのコントロール」は武器を手に持たない状態でもとても有用です。

長さ2.3メートル、重さ1.5キログラム程度の棒状の武器である槍。

なぜ全身を使わないとコントロールが難しいのか。
見方を変えると、なぜ腕力が弱くても全身の協調が出来れば槍のコントロールが出来るのか?

今回は中国拳法の武器のひとつである「槍」についての話しです。
ニッチ過ぎかもしれませんがご覧ください。

槍の重さと長さを物干し竿にたとえてみた

わたしの手持ちの槍の長さは約2.3メートルです。
重さは1.5キログラムをすこし下回ります。

「1.5キロって、軽いじゃん」と思うかもしれません。
その通りといえばその通りなのですが、1.5キログラムの重量バランスが厄介なのです。

槍は主に二つのパーツに分かれます。
ひとつが棒の部分です。これが約1キログラム。
もうひとつが刃の部分である「穂先」。500グラム程度です。

槍の分解図

つまり穂先という先端20センチメートルに全重量(1.5キログラム)の約30%(500グラム)が集中しているのです。

家庭にあるものを例にとると「物干し竿とペットボトル」が想像しやすいかもしれません。

約2メートルに伸ばした物干し竿。
その先端に水の入った500ミリリットルのペットボトルがくくりつけられているような形です。

槍と物干し竿

そんな物干し竿の端っこを持った状態で片手で持ち上げるのは結構キツイです。

自然と穂先が下に下がり真っ直ぐに持つことも難しい状態です。
槍は前重心

ひとくちに1.5キログラムといってしまえば「軽い」のですが、この偏った重量を操るのに、腕力だけではちょっと難しいのが事実です。

「しなり」が更なる重量を生む

中国拳法で使う槍の特徴のひとつは「しなる」ということです。
釣竿みたいにビョーン、ビョーーーンと槍全体が「しなり」ます。

特徴は「しなり」にあり

先ほど申し上げたように、槍という武器は穂先のあるん先端の方が重い構造になっています。

そんな槍が「しなる」のです。
1.5キログラムという全体重量のうち、先端の約500グラムが「しなり」と一緒に遠心力やら反作用やらで実際の重さ以上の手ごたえを生みます。

実際に、調子に乗って振り回していると大体支えきれないで手から落ちます。

またそれを腕力だけで抑え込もうとすると10分も立たずに腕全体の筋肉がパンパンに張ってきます。

腕力だけでしなる槍を抑え込むのはきつすぎる

槍の型では、くるくる回したり、大きくぶん回す動きがあります。
大きく回すにも、小さく操るにもそれ相応の「腕力以外の何か」が必要になってきます。

重さの分散と全身協調が必要

軽くても扱いによっては大きな重さを持つようになる槍。
このやりをある程度動かすようになるためには「全身を使う」事が必要です。

ここでいう全身を使うというのは2つの意味合いがあります。
1. 槍の重さを全身に分散させる
2. 全身の力を少しずつ使って槍を操る
腕力を使わない分、全身の各パーツに腕の代わりを担ってもらうのです。

全身を使って槍を操る

このようにする事のメリットは3つあります。
1. 全身の力を少しずつ使うので疲労が分散する
2. 全身の力を少しずつ集めることで腕よりも大きな力を使える
3. 腕の力は槍の正確さに振り分けることが出来る

特に2の「腕よりも大きな力が出せる、使える」というのはメリットが大きく、槍を扱わないときでもとても役に立ちます。

3の槍を操る正確さについては、実際には腕力だけではないのですが、力を出すという出力機関を全身に振り分けているので、腕に余裕が出ます。

その余裕を使って、より精密に槍を操っていくことが可能になります。

全身を使うと楽になる

たとえ力が弱くても、全身の力を強調一致させていくことで、腕力に頼らない強い力を生むことが出来る。
槍の稽古は、この実感を得るのにとても役に立つのです。

軽やかに操り、重く攻撃する

槍の術里はわたしのメインウェポンである「形意拳」の原形となっている大切なものです。

素早く巻き込み、最小限の動きで相手を制する。
そうした動きには軽やかさな動きと重い攻撃の両方が必要となってきます。

突き、横に払い、縦に打ち下ろし、振り回す。
槍の動きの中でとても多くの要素が必要となってきます。

全身の協調、連動性
全身を操り、槍を相手に当てていくための集中力
長い時間槍を振り回すだけの体力

決して腕力ではないのです。
その人が持っている全身の力の開発と、それらを協調する方法を、たった一本の槍が万遍なく鍛えてくれるのです。

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