なんで太極拳にはたくさんの種類があるの?~中年会社員武術家がカレーに例えて説明します
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創造と工夫、心に明かりを
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さて、中国拳法で最も有名な拳法といえば太極拳が挙げられます。
その太極拳ですが、実はいくつもの種類があります。
陳式(ちんしき)、楊式(ようしき)、孫式(そんしき)、呉式(ごしき)、武式(ぶしき)…他にもいくつもあります。
では、なぜこんなにも種類があるのか
そこには、各種類のスタイルを作り上げた創始者の生い立ちが関わってきます。
今回は「なんで太極拳ってそんなに種類があるのさ?」という素朴な疑問について説明したいと思います。
●1.ベースは同じでもスタイルが違う理由
●2.カレーに例えてみる
●3.同じベースを持つ利点
内容については中年会社員武術家JunoIwamiの好物であるカレーを例にして説明しています。
目次
<<●1.ベースは同じでもスタイルが違う理由>>
それぞれの種類の太極拳には創始者にあたる人物がいます。
その人物が今までどのような環境に生きてきたかという事は、武術スタイルの確立に重要な要素となります。
どのような武術を習ってきたのか。
住んでいた地域は危険なのか安全なのか
どのような体格なのか
どう戦いたいのか、
そうした生い立ち(バックボーン)と、太極拳の原則(ベース)が創始者の中で根付き、溶け合った時、その人物のスタイルを前面に出した太極拳が生まれます。
とても単純でとても根深い理由が、何種類もの派生、分派が生まれる理由となります。
<<●2.カレーに例えてみる>>
この「ベースは同じだけどスタイルが違う」という話はカレーに例えると分かりやすいと思います。
カレーは複数の香辛料と肉、野菜などの具材を使い、味付けをした煮込み料理です。
この基本(ベース)は変わりませんが、スタイルによって全く変わってきます。
皆さんおなじみの日本風のカレーがあります。
日本風でも、様々な違いがあります。
サラサラなカレーととろみのあるカレーの違い、具材の大きさなども違います。
海外に目を向ければ、インド、タイ、洋風、その他諸々…
国や地域、家庭、作る人によってさまざまな味や種類があります。
そして、その味のスタイルを決めるのが、その人の生い立ちです。
今までどのような料理を食べてきたか、どのような食材が使われるかによって味の好みや料理法も決まってきます。
どんなにおいしいカレーでも
「私はこうした方が美味しいと感じるからこうしたい」
「うちの地域ではこっちの食材の方が多く採れるから、これを利用したい」
このような要望や必要性は必ず起こります。
そうした望みに合わせて、「ベースは同じでもスタイルが違うカレー」が生まれます。
太極拳もカレーのように創始者の望みに合わせて、ベースとなる大事なことは守りながらスタイルを変化させているといえます。
<<●3.同じベースを持つ利点>>
このように太極拳はいくつもの種類があります。
それぞれのスタイルや風格、目指すところに微妙な差はありますが、ベースが同じという事に変わりはありません。
ベースが同じという事の良いところは、どの種類の太極拳に飛び込んでもなじみやすく、他の種類に変更しても今までやってきたことが活用しやすいという事です。
また一つの種類にこだわらず、同時に複数の太極拳を習うと、これはこれで微妙な差が互いに関連付けられたりして面白いのです。
いくつもの種類を持つ太極拳ですが、それらは全て多くの先人たちが知恵を絞り、稽古を積んだ集大成です。
始めは種類が多くて煩わしさを感じていましたが、まるでカレーのような多様性を持つことに気づくと、その一つ一つがそれぞれ違った希望と可能性を持っていると感じるようになりました。