中年会社員武術家が「雑式捶(ざっしきすい)」をお雑煮に例えた理由を動きの構成から見てみよう
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創造と工夫、心に明かりを
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さて、前回は中国拳法の形意拳(けいいけん)の型の一つ「雑式捶」を「まるでお雑煮のような型です」として紹介しました。
では、実際のところ「雑式捶」はどのような型なのか
そうした疑問に触れていこうと思います。
今回は、雑式捶の型の順番や動きの概略を中心にして説明します。
●1.型の構成
●2.1つの共通動作
●3.4つの個別動作
中年会社員武術家JunoIwamiは演武に向けて練習しつつも
「武術としてこの動きは適切か?」という内容に気を付けて取り組んでいます。
目次
<<●1.型の構成>>
雑煮のように様々な技を一つの「型」に組み込んだ雑式捶ですが、延々と動作を続けていては見る側も疲れますし、やる方はもっと疲れます。
どんなにおいしい料理でも、食べ続ければ飽きてしまいますし、食べる量にも限界があるのです、多分。
雑式捶も適度な長さで終わるようにできています。
そして練習として十分な効果を得られるような型となっています。
その内容は1つの共通動作(同じ順番の動き)と4つの個別動作(違う動き)の組み合わせで構成されています。
◆ 「雑式捶」の型の流れ
型の順番は下のような流れになっています。
1. 始まり~共通動作1回目
2. 個別動作の一個目
3. 共通動作2回目
4. 個別動作の二個目
5. 共通動作3回目
6. 個別動作の三個目
7. 共通動作4回目
8. 個別動作の四個目
9. 終わり
…演武者としてはなかなかにハードです。
見る人にとっても、同じような動きが4回もでるため「あれ、さっきと同じ動作を繰り返しているのでは?」と疑問を抱かせます。
これをいかにして飽きさせず、一回毎の共通動作に魅力を詰め込めるかが、演武者の腕の見せ所です。
<<●2.1つの共通動作>>
この雑式捶において4回も繰り返される共通動作があります。
それは形意拳では崩拳(ぽんけん)と呼ばれる中段突きから始まる8つの連続動作です(数え方によって動作の数は増減します)。
およそ中国拳法のような型を重視した練習方法で同じ動作が繰り返し出てくる場合、その動作はその拳法でとても重要な役割があります。
太極拳に比べて短いと言える形意拳の型。
その中でもわざわざ4回も繰り返す動作はそれだけ重要視されていると言えます。
そしてそれは崩拳という実に形意拳らしい動きから始まるのです。
<<●3.4つの個別動作>>
共通動作との間に挟まる4つの個別動作は、形意拳の他の型からの流用が殆どです。
4つの個別動作はそれぞれが共通動作にはない特徴や意味を持っています。
1. 燕(つばめ)の型(素早い上下動)(個別動作の一個目)
2. 後ろに下がりながらの回避と反撃(個別動作の二個目)
3. 両手を使った低い姿勢での攻撃(個別動作の三個目)
4. 蹴りからの中段突き及び転身(振り返り)動作による背後への対応(個別動作の四個目)
これらの動作を念入りに練習することで、それぞれの技を繋ぎあわせていきます。
形意拳らしく、そして武術としての要求を見たし、見るものを楽しませる。
形意拳の雑式捶は様々な要求を見たし、それぞれの動作を活かす型です。
やはりお雑煮のような、様々な具材の良さを活かした味のある型と言えるでしょう。