迫るナイフを避けるには視野の広さが重要です~武術における「八方目」という考え
創造と工夫、心に明かりを
———-
さて、
武術の稽古では、ナイフで刺されそうな時の対処方法を練習します。
私のような気が小さく臆病な人間は、たとえそれがおもちゃのナイフであっても、その先端から目を離せなくなり、避ける間もなく刺されます。
そうした状況を解決するため、少林寺拳法時代に「八方目(はっぽうもく)」という方法を習いました。
八方目は優れものです。私の「視線がナイフから離せない問題」を解決し、迫り来るナイフを躱す練習に打ち込めるようにしてくれました。
●1.八方目という考え方
●2.八方目の練習コンセプト
●3.いざ練習、ナイフをかわせ
中年会社員武術家JunoIwamiが現在取り組んでいる中国拳法にもこうした言葉はたくさんあります。しかし個人的に「八方目」の方がイメージしやすいため、この言葉を好んで使っています。
目次
<<●1.八方目という考え方>>
様々な方向を指す「四方八方(しほうはっぽう)」という言葉があります。
八方目とは、文字通り様々な方向を見る(把握する)という事です。
見る、と言っても視線を動かす事ではありません。
むしろ視線はあまり動かさない事が重要です。
私は「前を向いたまま、視野に映るすべてを把握しろ」と教わりました。
「無茶言うなよ。そんなことが出来るものか」
始めはそう思ったのですが、やってみると何とかなります。
つくづく、人間の順応性は凄いなと思います。
<<●2.八方目の練習コンセプト>>
今この記事を見ている方は、パソコンかスマートフォンで見ていると思います。
その画面から目を離さずに、自分の視野に何が映っているかを確認する事は出来ますか?
画面を見つめたまま上下左右に視野を広げてみてください。
メモ帳やノートだけではなく。立てかけてある荷物や棚の上の箱なども見えると思います。
思いの他、さまざまなものが視界に入っている事が分かる筈です。
この状態なら、少しだけ視線を揺らすだけで自分の真横さえ瞬間的に確認できます。
視点を固定した状態での最も広い視野の範囲を把握し、僅かな視線の揺れで周りの状態を把握するという方法が練習のコンセプトです。
<<●3.いざ練習、ナイフをかわせ>>
さあ、練習です。相手にはナイフを握ってもらいましょう。
切れないナイフでOKです。
そのナイフで思い切り突いたり、切りかかってもらいます。
思い切りです。その勢いが大事です。ここで手加減していては練習になりません。
私の相手となる方々は、それはもう思い切りやってくれましたので、とても怖かったです。
慣れない「八方目」は距離感が難しく、変な角度で何度も攻撃が当たります。これが本当に切れるナイフだったら確実に失血死です。
しかし、やはり人間の練習というか順応性は凄いものです。
隣で練習している人たちの様子を視野に入れつつも、目の前のナイフを躱していく事が徐々に可能となりました。
<<冷静な対処のための一手として>>
恐怖に怯え、ナイフを凝視してしまう場合、そのナイフにだけ意識が持って行かれます。
ナイフが動けばそのナイフを目で追ってしまい、逃げようにも躱そうにも体の反応が遅れます。
八方目を行うという事は、目で対象を追ってしまう「見過ぎ」な状況を解決してくれます。
確かにナイフは視野の中に入っているのですが、ナイフより先に持っている人の変化が先に把握できるため、目で追う必要がないのです。
視線を離せなかった時に感じたあの恐怖はそれほど感じなくなり、冷静な対処が出来る。
八方目による視野の拡大は、技より前に必要な目の重要性に気づかせてくれました。
———-
立ち止まっても倒れても、また人は歩き出す 岩見より