同時に使って体を鍛える~中国拳法での「複数要素の同時運用」②

創造と工夫、心に明かりを
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さて
体を鍛えるだけであれば、強くなるだけであれば、そんなに難しい話ではありません。
無理をすればよいのです。
怪我をしたくないのならもっと簡単です。家に引きこもればいいのですから。

そんな極端な状況を脱出し、いかにして頑健に、健康的に、継続的に体を鍛えるか
それが重要です。

中年会社員武術家JunoIwamiが取り組む、中国拳法を始めとした武術では、そうした課題について応えられる練習体制が組まれています。

今回はそうした練習方法の一つを説明します。
今までやってきた練習内容を「同時に行う」という内容です。

●1.同じ「守るべき事」を1週間練習する
●2.3つまで同じように続ける
(上の二つについては前回の記事をご覧ください)
●3.3つの「守るべき事」を同時に行う

今回の内容は「複数要素の同時運用」と言います。
昔からあるポピュラーな方法ですが、もう一度振り返るために、ここに掲載します。

目次

<<縦に成長した要素を横に繋げる取り組み>>

それぞれの要素を一定期間集中して成長させて、今度はそれを横に繋げていく。
この方法は長期的な視野を持たないと難しい試みです。

しかし、「自然と身に着くまで『漠然と』練習をする」というやり方に比べると、地に足の着いた現実的な練習方法と言えます。

●3. 3つの「守るべき事」を同時に行う

この試みは自分にとっての勝負どころと言えます。
なぜなら、一つ一つの守るべき事を同時に運用するという難題にチャレンジするからです

この練習では個別の内容について上達することを全く考えず、ただただ同時に使えるようにする事に注力します

例を挙げます
前回の●2では下の様な例を示しました。

練習中に行う「守るべき事」として下のような3つを実行します。
・先週は体を真っ直ぐにする「立身中正(りっしんちゅうせい)」を練習をした。
・今週は歩法のために「つま先と膝の角度を合わせる」事に注力する。
・来週は視野を広くしたいので「遠くを見続ける」事をやる予定。
こういう感じです。

上の場合の同時運用では
「体を真っ直ぐにして」
「膝とつま先の角度を合わせ」
「遠くを見続ける」

この3つを同時に行う事になります。

簡単そうに見えると思います。実際私も「簡単じゃん」と思っていたのです
しかしそれは個別に取り組んだ時の話でした。

同時にやることはても難しく、悩みました。
「無理だろこれ」とか「自然に身に着くまで同じ稽古を繰り返した方が早いのでは?」と言うセリフが頭の中で繰り返されるほどです。

しかし人間の「慣れ」は凄いのです
直ぐにとは言えませんが、この「3つ同時運用」の完成度が徐々に上がっていくのです。

この方法により、個別の「守るべき事」に対して、良い意味でバランスが取れるようになりました。
体の各場所が一斉に動くのを強く感じます。
同時運用に取り組んでいない時は、どこかのパーツが必ず遅れていました。

こうした「複数要素の同時運用」を他の「守るべき事」についてもやっていきます。
同時運用の数は「3」だけでなく、時には「5」にも「7」にも増やしていきます。
こうすることで自分の体をどんどんと開発していきました。

<<成長サイクルの先にいる自分>>

1ヶ月という期間が必要ですが、自分に合ったペースで行う事が出来るこの方法は、私にとってとても重要です。

中国拳法では様々な「守るべき事」が多いため、同時運用の数が「3」ですら難しい場合さえあります。
そうした場合はシンプルにします。
たとえば形意拳の三体式の様な、「黙って立って動かない構え」の時になら、3つ同時くらいは出来ますので、効果を実感できます。

一周回った頃には、随分と違う自分になっていることにとても驚くのです。

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立ち止まっても倒れても、また人は歩き出す  岩見より