東京インターナショナルペンショー2019〜「書く」こだわりを実感するマニアックイベント
趣味と情熱に燃えるニッチな分野が好きな岩見です、ごきげんよう。
2019年10月5日から6日にかけて開催された「東京インターナショナルペンショー2019」に行ってきました。
「書くこと」にこだわり
道具、紙、色に並々ならぬ情熱を燃やすニッチ極まりない業者が集う、いい意味での変たi…マニアックなイベント。
並ぶ万年筆
のけぞるほどのインクの種類
それらを受けとめるこだわりの紙
試し書きももちろんOK!
(むしろドヤ顔で「書いてみなされ」と勧められる)
業者、あるいは作り手と直接話をしながら知的好奇心を満たし
実物を手にとっては素晴らしい出来栄えに感動し
物欲とお財布への打撃に葛藤、悶絶する。
即売会ならではのドラマと交流がここにはあった!
そんな悲喜交々なマニアックイベントについて語りましょう。
目次
東京インターナショナルペンショー2019概要
まずは概要についてさらっと説明です。
・開催期間 2019年10月5日(土) 10時~17時、6日(日) 10時~16時
・開催場所 東京都台東区 東京都立産業貿易センター台東館 4F
・入場料 500円(当日券のみ、2日通し料金はなし、中学生以下は無料)
2018年と同じ。来年からは上がるかな?
・クレジットカードは使える?
入場料は現金支払いです。
それ以外の、出展しているブースでの買い物ではおおむねクレジットカードが使えていました。
え、わたし?
わたしはいつもニコニコ現金一括払い派なのでカードは使いませんでした。
・出展ブースと種類
出展ブースの数は公式ホームページの出展一覧を見ると64ブース。
国内の文具メーカーや個人製作者などを中心に、ヨーロッパ、アメリカ、韓国、中国など海外からも参加していました。
興味のある方はこちらのリンク先をご覧ください。
(外部リンク 東京インターナショナルペンショー2019 出展者一覧)
ワンフロアですむ程度の小規模イベントなのもありがたい。
同じ場所で開催される「東京レザーフェア」にも毎年行くのですが、このイベントは出展ブースが多くて4階から7階までのフロアを使ってやるイベントです。
見応えありすぎて疲れます。
・特設会場を設けてイベント各種あり
トークショー、万年筆のメンテナンス講座、インクの調合など、イベントに関連するものが開催されていました。
個人的にはトップバッターのアカペラグループの合唱は驚いたがとても良かった。
いや、文具には関係ないはずなんですけどね。
インクが盛りだくさん!ネーミングセンスがキラリと光る
このイベントに来てまず驚くのはインクの数と種類です。
インクだけでも10個(社?)以上のブースが出している。
その数もさることながら、真剣な目(あるいは血走った目)で試し書きに集中する来場者がちょっと怖い。
日常的にインクを使う機会がない一般人にとっていきなり異次元に放り込まれたような場違い感がたまりません。
ひとつのブースで仮に10種類のインクが出たとして、軽く100を超える数のインクが出ていることになります。
体感としては200種類は超えてましたね。
大手文具店では見られないオリジナルインクの数々がそこかしこにあるのは圧巻です。
ネーミングセンスがまた素晴らしい。
色をイメージとして伝えるセンスが光ります。
清々しい青い発色のあるいインクの商品名が「こひぶみ」(静岡の老舗文具店「四葉商会」さん提供)とあるように、国産らしい名前のつけ方がステキです。
個人的に秀逸だったのは【生しらす」】
なぜ「しらす」しかも「生(なま)」なのか
濃いグレー系の色からどうしてこの名前になったのか、妄想が止まりません。
価格は50ml瓶で2500〜3000円。
ひとつ買えば1年以上使えるわたしにとっては高いものではない。
ないのだが、単価としては高く感じるのは庶民として仕方ないと思うのです。
入場2分、イベント限定インクを即買い!
はい、早速購入しました万年筆用のインク!
入ってから2分での出来事でした。
「ペンショー限定インク販売 LIMITED INK 2019!」
いやね、本当はね
インクなんて買う予定なかったんですよ。
でも、会場に入ってなんとなく右に向いて進んだら
あったんですよ、イベント限定インクが
しかも2色(緑と茶色)
で、そのうちひとつがわたしが好きな緑系の色だったんです。
欲しいといえば欲しいけど、買うほどのものじゃないだろうと思ってたんですけどね
「限定インク、緑はラストふたつです!」って
限定モノに弱い日本人はここで迷い始めます
(術中にはまる)
どうしよーかなーって考えているうちに、後ろから来た女性が即決で一本ずつ買ってしまったわけで
(募る焦燥感)
「緑あとひとつ!」って
販売しているオネーサンさがさ、こっち見て言うんです。
(煽る煽る)
もう、目がね「これ逃したら買えませんよー」って言ってる。
目力(めぢから)すごいの
考えたんですよ、2秒くらい。
「買ぁってやろうじゃねーかコンチクショー!!」
物欲とプレッシャーに負けました。
でもいいです、これひと瓶で1年は使えるので安い買い物です。
「会場限定インク!みどり完売しましたー!!」
声をあげるオネーサン
マイク持ち出して完売を場内にアナウンスを始める。
なぜかわき起こる拍手
「茶色もあと数本しかありませんのでお早めにお買い求めください」と催促も忘れない。
さらに外国人男性スタッフも連れてきて同じ内容を英語でアナウンスする。
見ると、結構外国人も多くいて「ENGLISH」の腕章をつけたスタッフもいる。
インターナショナルなイベントだ。
なんかもう無駄に高い熱量に、逃げるようにテーブルの前から去りました。
さあ、気を取り直して出展ブースをまわるとしましょう。
万年筆も個性派から正統派まで!ただし予算に気をつけて
「書く」といえばペン
筆記具の王様「万年筆」も多くありました。
上の写真は「笑暮屋(えぼや)」さんの万年筆。
(笑暮屋 出展内容の紹介)
インク同様に大手文具店だってここまではない品揃え。
「ザ 万年筆!」という正統派もあれば
材質やデザインが光る個性派万年筆まで様々です。
掘り出し物やプロトタイプ、アウトレット品もあって見ているだけでも楽しいです。
各社が一堂に集まり、試し書きまでできる。
そうした意味でこのイベントはすごい。
さすが年に一度のイベントです。
ただし!
買うなら予算にお気をつけください。
会場に展示されている万年筆のメインとなる価格帯が3〜4万円くらい。
ペン先がスチールの、一般的には安いと言われる価格帯のものでも数千円から始まります。
お財布とカードに大打撃間違いなしです。
工芸品とも言えるガラスペン、ご存知?
ガラスペンというのをご存知でしょうか?
実は日本発祥の筆記具です。
(ガラスペン〜Wikipediaリンク)
どうでしょう、この美しさ。
筆記具でありながら工芸品のようです。
万年筆が王様なら、ガラスペンは「女王」か「貴族」といったところでしょうか。
筆記具としての構造はシンプルです。
先端のガラス部分に溝(みぞ)が掘られているので、そこをインクに浸してから書いていきます。
書ける量は溝に付着するインクの量に左右されます。
ハガキ一枚から原稿用紙丸々一枚までと幅もあり、自分の書くスタイルにあったタイプを選べます。
そんなガラスペンもここでは展示されています。
ニッチな筆記具なのに結構な数が出ています。
かなり、欲しい。
手持ちに一本あるのですが、これはガラスペン特有の、ちょっとカリカリ系の書き心地。
今はカリカリ系よりひっかかりのないサラッと書けるのが欲しいので、そういうのがないかと探していました。
8000円くらいだせば買える、かな?
2000円で安くて良さそうなのもあるけど、それはカリカリ系の書き心地だったので今回は見送り。
このイベントだと実試し書きをしてから買えます。
デザインだけでなく書き心地も試した上で品物を買えるのはマッチングの意味でも助かります。
個人的にサラッとしている書き心地を求めると、川西硝子さんのガラスペンが一番突出している感じ。
サラッとかけるのに特化している。
いつか買いたいものです。
それまでは自宅のカリカリ系のガラスペンを使っていこう。
買おうと思った筆記具
実は一本だけ筆記具を買おうとしました。
それは「平井木工挽物所」が提供する木製のボールペン。
(平井木工挽物所 出展内容の紹介)
手で触れるボディの感触がが気に入りました。
物欲ゲージが危険領域に入ります。
同じ木製で作られた万年筆も味があって良い。
ボディやキャップは木製で、ペン先やねじ止めなどの部品は日本製やドイツ製を使っているので性能としても安心です。
だから、じっくり木の感触を味わいながら書き出せる。
実に良い。
買おうか買うまいか、散々迷いました。
迷いすぎて写真を撮り忘れるくらい迷いました。
冷静になろうと、一度グルっと会場を回りながら「あのペンは今の私にふさわしいものか?」と自問自答していました。
で、買う気80%でブースに顔を出したら、屋久杉の良い部材で作られたボールペンと万年筆をあらためて紹介してくれたのです。
これはホームページに掲載されている屋久杉とは違うものでした。
年輪の目がみっちりと細かく美しい。
そして手触りが、実に良いのです。
それを持ったら、当初買おうと思っていたものが色褪せて感じてしまい、買う気がなくなってしまいました。
「来年、買おう」
結局ボールペンは買いませんでした。
紙やノートがあって「書く」は完成する
紙の類も想像以上の数があります。
このイベントのメインとなる「万年筆とインク」という組み合わせ。
趣がある反面、デメリットもあります。
インクの乾きが悪くて他の紙に移ってしまう。
書いた文字が紙の裏に抜けてしまう。
万年筆の書き心地が普通の紙では気持ちよくない、など
わたしたちが普段使う油性ボールペンでの書く「作業」とは小さいのですが確実に違うのです。
そうした違和感を優しくカバーしてくれるのが「紙」の存在。
書き心地はよいか?
インクはどのくらいで乾くか?
紙の裏にインクが抜けないか?
インクが乾いたときの発色は?
厚さは?
手ざわりは?
「書く」を気持ち良くするためには、ペンとインク、そして紙という3つが必要です。
お気に入りの万年筆に
好きな色のインクを入れ
書くのが楽しくなる紙に書く(描く)
こうして「書く」が完成します。
わたしは万年筆であれ、ボールペンであれ、書く心地よさを味わうためには寧ろ紙こそが重要と考えてます。
なのでこのイベントでは「紙」を欲し、ノートや紙を扱うブースを見て回りました。
上の写真は「神戸派計画」さんの「GRAPHILO(グラフィーロ)」
【「ぬらぬら書く」をコンセプトに、万年筆の筆記特性をひたすら追求したオリジナルペーパー】をコンセプトに他にはない書き心地が味わえる紙でした。
(神戸派計画 出展内容の紹介)
スタッフさん「いかがですか、書き心地は?」
わたし「気色悪いくらいの書き心地ですね(笑顔で褒めている)」
今にして思えば、もう少し言いようがあったのではないかと反省しております。
買った紙やノートの紹介
買った紙類について3つ紹介します。
まずは【試筆紙(しひつし)】
「Pen and message.」さんから出されている製品です。
端的に言えば「試し書きのための紙」
万年筆であろうとボールペンだろうと、どんな筆記具でも平均的に書ける。
万年筆のインクの裏抜けもはあるけど裏移りはないので、次のページにインクが染み出すということを心配しなくて良い。
よく、店先で書いたときは良いのに、自宅のノートに書くとしっくりこないという状況がある。
そうした状況を回避したいと生まれたのがこの商品。
実にユーザーのことをわかっています。
地味に売れ続ける自慢の商品というのも納得です。
ノート形式ではなく、不要なページは剥がせるタイプ。
B5サイズで330円というリーズナブルな価格帯も嬉しい。
昨年もこのイベントで3冊買い、気に入ったのでリピートです。
次は、「あたぼうステーショナリー」さんから発売されている【スライド手帳】のリフィル。
2週間の見開きを入れ替えながら管理できるという、ありそうでなさそうなアイデアリフィル。
昨年は売ってなかったので今回は手持ちのバイブルサイズのものを購入。
どういう使い方になるか楽しみです。
最後は、「趣味の文具箱」さんのブースで入手した【SORA (ソラ)ノート】。
インデックスページやページ番号まで備える高級ノート。
この一冊は自分のことを書き綴る、保管用のノートとして以前から目をつけてました。
A5サイズ、方眼、ハードカバータイプがあったのでゲット。
2700円のものが会場特別価格で1500円で手に入ったことに顔がホクホクです。
小洒落た小物でデスクを書斎に
小物もありましたね。
小洒落た雰囲気を醸し出す。
無機質なデスクが「書斎」な雰囲気になるかも。
カワイイ!カニのペンホルダー
小物はひとつ買いました。
アーニトルさんのカニの形のペンホルダー(500円)
各種カラーバリエーションがあったけど、ここでも好きな緑色を選ぶ。
カワイイ
振り上げたカニの腕にペンをのせる。
ただのボールペンをバーベルのように雄々しく持ち上げている様子がいじらしい。
個人的ベスト製品は?
個人的に「Tree Ring Pens」がとても良いと感じました。
50年ものの木材を使った万年筆と時計が持つ美しさが感動ものでした。
これはもう、芸術品です。
書く時間を特別なモノにしたいから
高級文具ばかりのこのイベント
正直商品を買うにはやや敷居が高いことは否めません。
しかし普段の仕事とかでしている事務的な作業としての書くではなく
【人生や感性を書き綴る特別な時間】にしたい。
そんな自分にふさわしい文具を選ぶという時、このイベントは自分の持ち物の幅を広げることにつながると思います。
昨年はじめてこのイベントを知り、なんとなく足を運んだところ、あまりにアレな感じに圧倒され、同時に高い熱量とこだわりを感じました(その時の様子については未掲載です。いつか書きたい)。
どんな意図があってこの道具(インク、筆記具、紙)を作ったのか
どういった人たちがこれらを使うのか
そうしたことを少し聞いたりするのが楽しいです。
ブースの人も営業トークを少し離れた対応をしてくれます。
気づけば随分時間を使ってました。90分で終わらせるつもりが、4時間20分もウロウロしていました。
そんな自分に気付き、やっちまった感と充実感の両方を感じながら会場を後にしました。