郷愁の趣「おより亭」でひとり静かにすごす~2021年9月長野県大鹿村2

郷愁をわきたたせる家屋が好きな岩見です、ごきげんよう

そこにあったのは記憶にある祖父母の家のような古い家屋
昭和の歴史を集めたような品々

ここは長野県大鹿村にある「おより亭」
まるでタイムスリップしたかのような場所

部屋の中央にあるのは囲炉裏
大きな五徳に自在鉤が天井から吊るされている

炭で火をおこし
川魚を焼いて食べる

古びた農工具
古時計に黒電話
赤茶けた円筒形のポスト

ノスタルジック、旅愁、望郷、レトロ、郷愁
心の奥をくすぐるたたずまいは深く静かにしみわたる。

とても懐かしい香りのする、一泊ひとり旅の記録です。

到着、おより亭

東京から高速バスと路線バス、さらに停留所から女将さんに迎えに来てもらっておより亭に到着
(道中期は前回の記事をご覧ください)

思ったよりずっと風情がある。
ここでの一泊はわたしに何をもたらすのだろうか。

看板にある「そば、うどん」は現在はやっていないとのこと。
復活したら是非にもいただきたい。

階段を上る。雨上がりの緑がみずみずしい。

なつかしい型の郵便ポスト
もう、昭和やん

これから過ごす宿の外観
ああ、なんとも懐かしい感じがする

煙突と煙
風呂場らしい、薪で湯を沸かしているとのこと

壁には農工具?
昔はきっと現役で使われていたのだろう。
ひょっとしたら今も使われているのかもしれない。

宿の周りをウロウロするだけでも楽しそう。
なにがどのように置かれているのだろう?って。

おより亭は内装も泣けるくらいに懐かしい

おより亭の中に入ります。

くぐり戸をまたいだ時に鼻をくすぐった炭の香り。
目の前の囲炉裏からの香りだ。

記憶が一気に幼少期の田舎の祖母の家に飛ぶ。
気に入った、とても気に入った。
実家に帰ってきた感覚だ。

「おじゃまします」というべきか、それとも「ただいま」というべきか

いずれにしても泣けるくらいに懐かしい佇まい。

天井にはランプ

壁にかかっている時計にも年季を関じる。

壁や棚には様々なものが飾られていて、この家に流れてきた時間の多さや積み重なった歴史を感じます。

この雑多感、生活感あふれる状態はまさに「実家」です。

低いアングルで撮影。
小さい頃、わたしはこのくらいの角度から世界見上げていたのかも知れない。
囲炉裏の写真を撮ってみて、そう思った。

女将さんとの会話

囲炉裏の前に座り、梨とお茶をもらい、女将さんと談笑します。

予約の電話の時に何度か聞いた「これだけの宿」という言葉。

でも、それこそが欲しかったものだった。

泊まる場所、空気感。
ここにしかないものを感じる。

ここに来られてよかった。
こうした日本の家屋が残っていてありがたかった。

泊まるのは私ひとり。
この空気感を思う存分に堪能できます。

岩風呂がただただ気持ち良い

夕方、といっても16時頃お風呂をいただきます。
一度外に出て目の前の別の家屋に入ります。

風呂の中はこんな感じ、風情がありすぎます。

薪で炊いた風呂は柔らかい水質。
湯加減もちょうど良くて気持ち良い。
「ああ、これマジヤバイ」としか言えないくらいの気持ち良さ。

いつまでも入っていたくなる。

よくかき混ぜないと上の方はそこそこ熱いというのも久しぶりで楽しい。
童心にかえって浴槽をかき混ぜまくる。
そんな子供時代を思い出す。

家族風呂としての形に温かさを感じます。

浴室の大きな窓を開ければ目の前に山が見える。
今日の雨でカサをかぶっているけど、それはそれで風情がある。雨の降る音が耳に心地よくて情緒が増す。鈴虫の音がまた心地よい。

時間がゆっくりと進むひととき

風呂を上がったあとは夕食まで特にやることはない。
なにもする必要はない。

部屋の中をもういちど見渡したり、なんとはなく窓の外を眺める。

気分が落ち着く。
自然音はするけど生活音がしない環境。

ゆっくりと時間が進む。
そし時々止まる。

わたしの時間と実在が、ここにはある。

入り口横には何冊かの本

「お宿帳」
泊まっていた人たちがひとこと感想を書いてくノート。

見知らぬ人たちがそれぞれのシチュエーションでこの宿に泊まり、なにを感じたのかが書かれている。
それぞれの感想が面白い。

手に取って宿帳を読んでいく。
気が付くと夕食時になっていた。

(この宿帳を見て、ようやくご夫婦の名前を知る。)

夕食は滋味あふれる山川の幸

いよいよ食事です。
運ばれてきたのは畑で採れた野菜、川魚。
そして美味いと評判の鹿のジビエ料理。

川魚の名前は「アマゴ」というようです。
イワナより脂があるのが特徴。

アマゴと野菜は炭火で焼いていただきます。

まずは炭を炭壺から出して火をつけます。

網を特大五徳に乗せて…

火力、足りなくない?

ええい、まだるっこしい!!
コンロへGoそしてファイヤー!

意外と文明の利器を使っているのが微笑ましい。

音を立てて爆ぜる火の粉の散り様にアトラクション魂さえ感じます。

「こんなにバチバチと火花が散るものなんですね」
女将さん「いやあ、普段はこんなにはならないんですけどね」

炭を作る人が新しく変わったらしく、今までの炭とは違うらしい。
女将さん自身も驚いていました。

鹿肉のカルパッチョ
臭みもなくて歯応えもある。

噂にたがわぬ美味しさ。
美味!

この鹿肉はご主人が狩猟で仕留めたもの。

ほんまもののジビエ料理。
ゆっくり噛みしめていただきました。

ご主人は若いころから射撃で名を馳せており、狩猟がやりたくて一年通して狩猟が許可されている大鹿村に移住してきたという経歴の持ち主。
(それに加えて議会議員もやってるとのこと。)
スゴイの一言です。

隣りのお盆にはご飯、味噌汁、そして天ぷら。
天ぷらからは香ばしい香りが立ち、食欲をそそります。

「これ、絶対に美味しいやつじゃん」

どれもこれも、煮物や漬物、豆腐も美味しいこと。
風呂に浸かった後にこんなにも美味しい料理を食べられることに幸せを感じます。

美味しい料理に女将さんとの会話も弾む。
会合が終わったらしいご主人を迎えに行くまで楽しい時間と美味しい料理をいただきました。

静かにひとり、なにもない時間

囲炉裏にはあたたかな熾火
たまに火が爆ぜる

「お酒、飲むかな」
台所には焼酎と梅酒、冷蔵庫にも冷酒やビールがある。

適当に持ってくる。

日本酒、焼酎、梅酒と、順番に飲んでいこう。

ひとりの時間。ネットにも繋がらない環境でひとり酒を飲む。
キャンプの時にさえ望めない、本当にひとりの時間だ。

寂しいかと言われれば、まあまあ寂しい。都会の喧騒がウソのようだ。
でも
とんでもなく豊かな時間もいうのも意識できる。

SNSもYouTubeもない環境。

持ってきた本さえあえて読まないことを選択をできる環境。

ひとり、ただひとり自分と向き合うことができる。
贅沢な時間をわたしは今、過ごすことができている。

思考は飛び、いつ果てることなくただ炭を延々と燃やし尽くす。
気が付けばマインドフルネス。

詰まるところ、これなのかも知れん。
思い煩うだけ無駄なこと。
ただ一心になにかを愚直にやり続けること。

遂げることもやり抜くことも考えずに、一意専心に居続ける。

眠くなってきた。
布団を敷き、電気を消す。
外は真っ暗だ。

なにがあるというわけではないけど、たまらない充実感との両立。
無為と充実の両方を味わいすごせた今日が終わる。

朝の散歩が気持ち良い

ぐっっっっすり寝た。
そりゃもう、快眠だった。

そのまま外に出て散歩を始める。

家屋の周辺をまわり、野趣あふれる佇まいと緑を見ていく。
そして道路に出てまたしばらく歩く。

自分の感覚に目を向けながら、空気や自然とのつながりを感じていく。

思考が静かだ。ガチャガチャしていない。

自分という存在が頭にいない、胸のあたりにいることが心地よい。

静かな感覚が全身を包む。

朝の稽古も格別の空気感

体を動かそう。
幸い、少し動けるスペースがある。

良い空気の中、良い稽古ができた。
部屋に戻ってからは柔軟をやっていく。実に気持ち良い。

お腹も心も満足した東屋での朝食~特に味噌汁が美味しかった

部屋に戻り休憩がてら宿帳を読んでいると「朝食の準備が整ったので食べましょう」と女将さんから声がかかります。

朝食は屋外の東屋で食べます。

わかるでしょうか、この「日本食」とした内容。

とても美味しいのです。
食材ひとつひとつが持つ味が濃厚とでもいえばいいのでしょうか。

長野に来て何かを食べると、東京で食べる料理がとてもスカスカなのを感じてしまいます。
それを、調味料や料理方法で補っているような食生活。

夕食の時も感じましたが、そのままでもきっと美味しい食材。
それが心を込めて調理され、こうして空の下で食べられることの幸せ。
たまりません。

目玉焼きは黄身が濃厚で舌の上にまったりと乗ってきます。
それでいて黄身と白身の間には半透明の部分があり、ひとつの目玉焼きに3つの味わいが広がります。

瞬間的な火力で作った目玉焼きの底面。
そこにあるオコゲがカリカリな触感また良い。

今のフライパンはほとんどテフロン加工になったせいか、こうした目玉焼きは提供されません。
「ああ、子供の頃はこうした目玉焼きが当たり前だったなあ」と舌に感じる感覚に記憶が過去に飛ばされる。

おひたし、新鮮なレタス、そして白米。
鮭の焼き加減も絶妙だ。

特に
特に
味噌汁が美味い。

美味すぎる。

思わず唸る、声が漏れる。

「あの、おかわり良いですか。この味噌汁。
あの、どこの味噌を使ったらこんなにおいしくなるんですか?」

いくらでもどうぞと、味噌汁とごはんのおかわりをいただく。
味噌は信州味噌

佐久とここ(おより亭)の途中にある味噌屋で購入した味噌らしい。

昨日は会えなかったご主人とお世話になった女将さんとわたし。

朝の団欒を過ごす。
美味しい朝食、弾む会話。

いろいろなことを話し、笑って驚いて感心する。
ああ、とても楽しい。

お土産もいただきました。
本当にありがたいです。
大切に使わせていただきます。

お腹も心も満足した朝食時間でした。

名残惜しいチェックアウト

名残惜しいですが、そろそろお別れの時間です。

宿代(と夜に飲んだお酒代)を清算します。
金額を見て「本当に良心的だ」と思いました。

一晩すごしたこの部屋を見渡します。

正直言うと帰りたくありません。
そのくらい馴染む環境でした。

なんとなく布団も畳んでおきます。
畳敷きの和室、本当に居心地が良かった。

そういえば、ここのトイレは汲み取り式なのですか、まったくニオイがしなくて驚きました。
最近は浄化槽の仕組みも変わったらしく、空気の流れのためニオイが漏れないようになっているそうです。

「でもまあ、タイミングもあると思いますよ」とのことですが、子供の頃の「ぼっとん」を知る人間にとっては驚きの環境でした。

和室に戻っての壁際。
この棚、この小物。
子供の頃の田舎の家を思い出します。

昨夜暖を取るためにお世話になった炭は玄関横にある「炭壺」に入れられています。
これも村の人が作っているのだそうです。

「リアル炭次郎がいるということか・・・」

年期を感じさせる巨大五徳
これの中に見える炭の熾火がとてもきれいでした。

玄関を出て一礼
お世話になりました。

また寄らせてください。

入り口を見上げると狸の置物。
周りの草木と相まってなんとも風情を感じます。

最寄りの停留所まで
おより亭を出てからの行動は前回の記事の後半に詳細を書いています。

雨が降った時のためにと、最寄りから一つ先の屋根のある停留所まで乗せてっていただいたことに感謝します。

路線バスでは運転手と話しながら雨の名残りのある川を眺め。

高速バスが来るまでの時間を使ってお土産のリンゴを買いました。
(買いすぎて、地味に重かったです。郵送すればよかったかも)

高速バスに乗ってからは新宿まで特に何もせずにいれば到着です。

こうして、1泊2日の長野県大滝村おより亭の旅は充実した終わりを迎えました。

ひとりの自由さと交流のあたたかさを感じた旅

ひとり旅の自由さを楽しみつつ
おより亭でのおもてなしによる温かみのある交流

わたしにとって実に良い塩梅でした。

程よくひとり
程よい関わり

ここに、わたしにとってのひとり旅の理想を見た気がします。

女将さんが電話でも実際にお会いしていた時にも口にしていた
「それだけの宿」は、
だからこそ心満たされるものがありました。

また、こうした旅を楽しみたいです。

ああ、本当によかった。

<了>

関連リンク

内部リンク

(この記事です)
昭和にタイムスリップしたかのような「おより亭」での時間。

(前の記事です)
長野県大滝村にある「おより亭」へバスの旅
なんで高速バスなのか、どんなメリットがあるのか、なにを調べればいいのか。
そうした情報を今回の旅行の流れを通じて書きました。

外部リンク

〈宿泊情報〉
大鹿村お山のお宿「おより亭」

静かで懐かしい、ノスタルジックが溢れる宿。
ご夫婦のあたたかなもてなしと料理が心身に沁みます。
「それだけの宿」がなによりもありがたかったです。

<大鹿村情報>
長野県大鹿村の宿泊先はここで探しました。
宿泊以外の情報も多くあります。

ようこそ南アルプスと歌舞伎の里大鹿村へ~宿泊情報

信州で2番目に山奥の村紀行~大鹿村宿泊施設一覧

<バス情報>
〈高速バス〉
高速バスの予約や路線の確認はこちらを利用しています。
「ハイウェイバスドットコム」

東京から高速バスを利用するとき、いつもお世話になっております。
「バスタ新宿」

大鹿村への路線バス(伊奈バス)

「松川インター」で高速バスから降りて大鹿村へのバス乗り換えに利用しました。
これがなかったらたどり着けなかったかも知れません。
本当にバスが一日に一度というのがあるのは衝撃でした。

〈おみやげ〉
JAみなみ信州直売所もなりん